前回は、人の発達課題についてお伝えしました。
今日はいよいよ老年期超越について、詳しくお伝えしていきます。
老年期超越とは?
老年期超越はgerotranscendenceと表記します。老年学(gerontology)の接頭語と超越(transcendence)という言葉を合わせたものになっています。
スウェーデンの社会学者であるラルン・トルンスタムが1980年代に提唱しました。
歳を重ねることで3つの視点において変化が起こり、若いころよりも幸福感が高まる傾向が生まれます。
① 自己概念の変容
自己中心的な考えがなくなり、利他的になるといわれています。自分自身への関心が薄れ、身体機能の低下や容姿の変化があっても受け入れられるようになるそうです。人生でよかったことも悪かったことも「必要だった」と思えるようになります。
② 社会と個人の関係性
社会的な地位や役割に固執する気持ちがなくなり、表面的な人間関係に興味がなくなるといわれています。人生の中で、良い悪いを決めることは難しいことを知り、地位や富への執着がなくなります。
③ 宇宙的意識
言葉としては難しいですが、「自分は大きな流れの中の一部である。」ということを認識できるようになります。自分個人の死を恐れる気持ちがなくなり、人生が科学的に証明されていることだけでなく神秘性に満ち溢れるものだということを受け入れられるようになると言われます。
いつ老年期超越を獲得できるのか?
トルンスタムの研究では、老年期超越を獲得できるのは55-65歳から急激に増えています。
意外と早い段階で達観できる方もいらっしゃるのですね。
研究全体でみると、なんの問題もなく、自然と老年期超越を獲得できるのは全体の20%だそうです。
ポイントは「自分の存在から視点を変えて、社会全体、ひいては宇宙の中という大きな流れを意識できること」にあります。
こうして書いていても、かなりスピリチュアルな話だと思えます。
歳を重ねて、環境に適応することはスピリチュアルな傾向になっていくもののようです。
大きな病気や親しい人との死別など、人生の中で危機を体験した人ほど老年期超越を獲得しやすい傾向にあります。
実は、老年期の心の動きに関する研究は、まだまだ多くありません。
なぜかというと、高齢化社会に入ってからの研究領域だからです。
ただ、新生児から若者の発達について論じられることが多くても、老年期に関する研究が一般には知られていないこと、
若い世代の方ほど、歳を重ねることをネガティブにとらえやすいことから、老年期について取り上げてみました。
わたし自身も長生きしてみないと体感できないことなんだな、と思うと、歳を重ねるのが楽しみになりますね。
それを迎える前の、心の大変さについてはぜひご相談くださいね。