毒親、親ガチャ、そんな言葉が定着してきましたね。
親をガチャに例えるなんて・・・と抵抗を示す人もいます。
裏を返せば、親に対する信頼感や尊敬の念が高い人が多いということですよね。
親、母、が悪として描かれる映画がなぜ怖いのかを解説していきます。
”母”が怖い映画
MOTHER
わたしが最初に思いだしたのは、長澤まさみさん主演の「MOTHER」です。
配信でご覧になった方も多いのでは?
あらすじとしては、不安定で自分勝手な母親に命令されるがまま祖父母を殺害してしまう息子のはなし。
途中、母親と息子を引き離そうと福祉職も出てくるのですが、親子は離れることができません。
わたしが10代だったら「こんな親捨てて幸せになればいいのに!」と憤慨しているでしょう。
母と子の特別な関係
いろんなご家庭があるので、個人的には母と子を特別視するのは好きではないのですが・・・。
それでも、子どもにとって一番身近な養育者は母親であると言われています。
乳児はその生命を維持するため、一番身近な養育者に愛着を持つように生まれてきます。
子どもが母親に愛着を示さなければ、母親は子供をかわいがって育ててくれないかもしれないからです。
愛着を生む”赤ちゃん”の特性
①把握反射
赤ちゃんの手に指をそっと当てるとぎゅっと握り返してくれるアレ。
これは反射なのです。
大人はとってもきゅんとしますよね。
②乳児期の視力
赤ちゃんの視力では18~30㎝くらいの距離しか見えません。
抱っこしているお母さんの顔がぼんやりと見える程度です。
赤ちゃんが一番に覚えるのがお母さんの顔なのもうなずけます。
③発信行動
お腹がすいたり、身に危険がせまったりすると、赤ちゃんは泣いて発信します。
近くにいる養育者は「助けないと!」「泣き止ませないと!」という気持ちになり、ミルクをあげたりおむつを替えたりしようとします。
赤ちゃんとの愛着形成は大人が赤ちゃんを世話するからだけではなく、赤ちゃんからのはたらきかけもあるのですね。
このように、そもそも遠く離れることのないように2者の間では愛着が形成されていきます。
お母さんと子どもが離れるのは並大抵のことではないのです。
誰でも完全に信頼している存在である母親が信頼できない映画は、それだけで不気味です。
母と子の依存関係
通常、子どもは3歳~思春期にかけて、ゆっくりと親離れしていきます。
最初はお母さんが見守る中で、公園遊びなどちょっと離れてみることから。
思春期には反抗期を迎え、反発することで自我が育ちます。
ところが「MOTHER」ではそうはいきません。
母親がとても不安定であり、子どもを心の(もしくはお金をせびる手段として)支えにしないと生きていけないからです。
子どもは母から自立するのではなく、母を支えることで自分の存在意義を見出すようになります。
反抗したり離れたりすれば、大好きな母親が生きていけないため、その環境に適応し母を支えるようになります。
赤ちゃんの頃は母に養育してもらっていた関係が逆転し、でも愛着関係は変わらないのです。
お互いがいないと生きていけない共依存関係となっています。
母が脅威となる映画がなぜ怖いのかというと、鑑賞している側が前提としている母との健全な愛着関係を覆してくるためです。
誰もが通常ではありえない「異常な関係」に不穏な空気や恐怖を覚えます。
こんな映画を見て、不穏な気持ちになったということは、お母さまと健全な関係でいられている証拠ですね。