映画の主人公分析シリーズです。
有名どころなのですが、今日は「ジョーカー」の主人公アーサーを分析していきます。
みなさんは「ジョーカー」をご覧になってますかね?
あらすじ程度のネタバレでやっていきたいと思います。
アーサーの基本的な性格
ジョーカーとして変貌する前のアーサーは、一見、気弱で優しい青年のようにみえます。
彼が暮らしている街はバットマンでおなじみのゴッサムシティ。
治安が悪く、人と人が好意的にかかわることが望めないような地域性です。
予告編冒頭の子どもをあやすシーンは、アーサーが子どもに優しく接している場面にみえます。
しかし、地域性を鑑みるとどうにも「空気が読めていない。」
子どものお母さんに煙たがられるのも仕方のない状況です。
アーサーの空気の読めなさは後々、彼を絶望に陥れるきっかけにもなります。
また、ストレスを感じると笑いだしてしまう症状。
これは本来、泣いたり怒ったりという感情表出をすべき場面で「笑う」という反応が起きてしまっている状態です。
アーサーの生活環境
アーサーは母親と二人暮らし。
アメリカを模しているゴッサムシティですから、アパートメントで母親と二人で暮らしている成人男性は珍しいと捉えることができます。
それだけ貧しく、また母親の介護の担い手がいない状況なのです。
ゴッサムの福祉事情がわかりませんが、母親が通院している様子も介護を受けている様子もありません。
一方で、アーサーは定期的に精神科の診察を受けている描写が描かれています。
精神科で、アーサーは医師?カウンセラー?らしき人に不満をぶつけます。
そのような存在がいたほうが安心なのですが、ゴッサムシティの医療事情でアーサーは診察を打ち切られてしまいます。
このとき、処方されていた精神薬も中断されてしまいます。
アーサーの妄想
アーサーはつらい現実に対して、妄想に頼ることで適応していました。
人気コメディ番組でスターになる自分を想像して、つらい現実を直視しないという方法をとっていたのです。
この状態は、医療を中断したあたりから崩れていきます。
アーサーは同じアパートメントで暮らす女性といい感じの仲になります。
エレベーターで出会い、世の中に対する不満をわかちあったことがきっかけです。
事件を起こし、ジョーカーとなる
不満はありながらも、ごく普通に暮らしていたアーサーですが、治安の悪いゴッサムシティです。
電車に乗っているだけで、酔っ払いに絡まれてしまいます。
たまたま銃を所持していたアーサーは、酔っ払い3人を射殺してしまいます。
注目したいのはその後。
公衆トイレに逃げ込んだアーサーは、殺人の高揚感から謎の舞を踊ります。
「ジョーカー」では、アーサーが悪事を働くことで気分が高揚している状態をダンスであらわすシーンがたくさんあります。
有名な階段でのダンスシーンも悪として気持ちを振り切った高揚感がよく表れています。
ちなみにアーサーはこのときも、全く面白くないギャグをTVショーで披露しようとしています。
空気を読めないことで、四六時中空回りしているのもアーサーの特徴です。
エスカレートする行動と妄想
アーサーが起こした事件を世間が認めるようになります。
政治に不満を持っているゴッサム市民がダークヒーローとしてジョーカーを賞賛するのです。
空気が読めずに人とうまく接することができなかったアーサーが、初めて人とのつながりを感じ、承認欲求が満たされた感覚を得ます。
「自分の行動は正しかった」そう錯覚するには十分の条件です。
良い仲の女性もジョーカーを「彼はヒーローよ。」と称賛します。
ところで、このとき、医療中断されて何日経っているのでしょう?
もともと服用していた薬が妄想を抑える作用のものだったとしたら?
人々に賞賛されている感覚、女性に肯定的にみられている感覚、それは現実的なものなのでしょうか。
わたしはバットマンに出てくるヴィランの生い立ちが好きで、またゴッサムシティという荒廃した街も好きで、ジョーカーという作品も大好きな作品のひとつです。
ゴッサムシティの医療、福祉をどうやったら立て直せるか・・・なんて妄想をしたりします。
まだ観てない方は、ぜひジョーカーをご覧になってみてください。